手紙から読み解く 戦国武将 意外な真実

手紙から読み解く戦国武将意外な真実

手紙から読み解く戦国武将意外な真実

 過大な思い込みや自分独自のキャラ設定から織田信長を書く「作家」「評論家」が多い。織田信長は「中間」「ほどほど」というものがない人なので、書き手によって180度評価がぐるんっ!とひっくり返ってしまう。

 比叡山焼き討ちにしたって、「政教分離を実現させた革命」と賞賛する人もいれば、「卑劣なサディスト」と誹謗する人もいる。いったいどっちなんだ?と思う。両方兼ね備えていたような気もするが、なんにしても見つめていると「落ち着かない人」だ。多動な3歳児を見ているときのような気分になる。

 そんな中、地道に資料にあたって淡々と「武将像」をトレースしていくこの本は好感が持てた。
戦国大名を残された手紙から読み解いていこうというもので、16人の戦国大名の「手紙」と解説文が紹介されている。伊達政宗などは「手紙魔」だったらしく、文章も表現力豊かで魅力的だ。

 「織田信長」の手紙も紹介されている。一揆を起こした越前の本願寺門徒を制圧した時の手紙や高天神城が降伏を願い出ているのに「無視せよ」という手紙。秀吉の浮気に悩む秀吉の正室「ねね」に宛てた手紙。

 いずれも、自分の言いたいことを相手に伝わるように書いて、かつ無駄が無い。頭のいい男だなー、とあらためて思う。

 気配りがきいているようで結構「押し」が強い。こういう相手だとついつい「イエス」といってしまいたくなりそうだ。